銀歯のリスクをご存じですか？
銀歯のリスクについて
はじめに
日本では長年にわたり、虫歯治療後の修復材料として「銀歯」が広く使用されてきました。
これは健康保険の適用対象であり、費用を抑えつつ強度に優れた治療が可能なため、多くの人々に選ばれてきた方法です。
しかし近年では、その安全性や健康への影響、審美的な側面から、銀歯の使用を見直す動きが進んでいます。
今回は、銀歯に関するさまざまなリスクについて科学的根拠を交えながら考察し、より安全で快適な口腔環境を実現するための代替手段についてもご紹介いたします。
銀歯とは何か
一般的に「銀歯」と呼ばれているものは、「金銀パラジウム合金」を主成分とした金属製の修復物です。
この合金には、銀、パラジウム、銅、金など複数の金属が含まれています。その中でも特にパラジウムはアレルゲンとして知られており、
アレルギー反応を引き起こす可能性があります。
銀歯は保険診療の範囲内で使用できるため費用を抑えることができますが、実際には口腔内でさまざまな問題を引き起こすリスクを抱えています。
銀歯による健康リスク
1. 金属アレルギーのリスク
銀歯に含まれるパラジウムやニッケル、銅といった金属は、体質によっては金属アレルギーを引き起こすことがあります。
唾液の影響で金属がイオン化し、粘膜や皮膚に触れることで、口内炎やアレルギー性接触皮膚炎を引き起こすことがあるのです。
特に「全身型金属アレルギー」の場合には、手足の湿疹やかゆみ、肌荒れなど、口腔とは一見無関係に見える症状が現れることがあり、
原因の特定が遅れるケースも少なくありません。
2. 歯の破折リスク
銀歯は強度に優れている反面、天然歯よりも衝撃吸収性が低いため、噛む力が直接歯の根に伝わりやすくなります。
神経を取ってもろくなった歯にその力が加わると、ヒビが入りやすくなります。
神経を取った歯には「コア（支台）」という土台を入れて銀歯を被せます。特に金属のコアは強度が高い一方で弾性がなく、
歯の内部に圧力をかけることがあり、これが歯根破折のリスクを高めます。
3. ガルバニー電流による不快感
異なる金属が口の中に共存していると、唾液を電解質として電流（ガルバニー電流）が発生することがあります。
たとえば、銀歯とチタン製インプラントなどが同時に存在している場合、この微弱電流により舌や歯にピリピリとした違和感や刺激を感じる方もいらっしゃいます。
また、電流によって金属の腐食が進み、長期的には脱落や修復不良の原因となることもあります。
4. 二次虫歯や歯周病のリスク
銀歯と歯の間には、時間の経過とともに微細な隙間が生じることがあります。
そこから細菌が侵入し、虫歯や歯周病が再発するリスクが高まります。
金属修復物は接着性があまり強くないため、劣化によって縁が浮いてしまったり摩耗したりすることで、プラークがたまりやすくなります。
特に、歯磨きが不十分な場合や定期的なメンテナンスが行われていない場合は、二次感染が進行しやすくなり、最終的に歯を失う可能性もあります。
5. 審美的な問題と心理的な影響
銀歯はその金属色が目立ちやすく、特に前歯や笑ったときに見える部分に装着されていると、審美的に大きな影響があります。
欧米諸国では、口元の美しさがビジネスや人間関係において重要な要素とされており、銀歯の使用は好まれない傾向があります。
日本国内においても、審美歯科への関心が高まる中で、銀歯に対してコンプレックスを抱える方が増えています。
6. 環境への負荷
銀歯やそれに関連する歯科技工材料の廃棄は、環境にも一定の影響を与えます。
かつて使用されていたアマルガムには水銀が含まれており、現在では人体や環境に有害であるとして多くの国で使用が禁止されています。
日本でも、持続可能な歯科医療を目指すうえで、金属を使用しない「メタルフリー治療」が推進されています。
銀歯の代替材料について
銀歯に代わる修復材料としては、より安全で美しい素材が多数登場しています。以下に代表的なものを挙げてご紹介します。
1. セラミック
セラミック素材は、天然歯に近い色味と透明感を持ち、見た目に非常に優れています。金属を一切含まず、金属アレルギーの心配がありません。
また、接着性が高いため虫歯の再発リスクも低いです。ただし、保険の適用外であるため費用は高めとなります。
2. コンポジットレジン
比較的小さな虫歯であれば、歯科用の樹脂（コンポジットレジン）による修復が可能です。保険適用で費用が抑えられ、治療も比較的短時間で済みます。
ただし、強度や変色のリスクがあるため、大きな欠損部には不向きです。
3. CAD/CAM冠（白い保険適用クラウン）
2014年以降、日本でも一部条件のもとで保険適用となったCAD/CAM冠は、レジンとセラミックを組み合わせた白い被せ物です。
金属を使わずに自然な見た目が得られる点が特徴で、メタルフリー治療を保険内で受けられる選択肢として注目されています。
ただし、レジンが含まれているため、吸水性による変形・細菌付着による二次感染のリスクがあります。
まとめ
銀歯は、費用対効果や耐久性の面では優れており、日本の歯科治療を長く支えてきました。
しかしながら、金属アレルギーや歯の破折のリスク、虫歯の再発、審美的な問題など、さまざまな課題があるのも事実です。
現代では、セラミックなどの優れた代替素材が登場しており、安全性と美しさを両立した治療が可能になっています。
ご自身の健康と長期的な満足を得るためにも、銀歯のリスクを正しく理解し、自分に合った治療方法を選ぶことが大切です。
