虫歯ってどんな病気?
私たちの生活にとても身近な病気のひとつが「虫歯(むしば)」です。歯医者さんに行く理由として一番多いのも、この虫歯かもしれません。
「歯が黒くなった」「甘いものがしみる」「噛むと痛い」──こうした経験をした人は多いのではないでしょうか。
虫歯の正しい名前は「う蝕(うしょく)」といい、歯が少しずつ溶けてしまう病気です。ここでは、虫歯ができる仕組み、進み方、症状、治療法、そして何より大切な予防の方法について、できるだけやさしい言葉で説明していきます。
1. 虫歯ができる仕組み
虫歯は、単純に言うと「菌が作る酸で歯が溶ける病気」です。
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菌(ばい菌)の存在
お口の中には何百種類もの細菌が住んでいます。その中でも「ミュータンス菌」という種類が虫歯の主な原因菌です。 -
糖(あまいもの)との関係
私たちが食べたり飲んだりする砂糖や炭水化物を、この菌が食べると「酸」を作ります。 -
酸によるダメージ
この酸が歯の表面のエナメル質を少しずつ溶かしていきます。これが「脱灰(だっかい)」という現象です。 -
時間がカギ
食べてすぐに歯が溶けるわけではありませんが、酸にさらされる時間が長いと虫歯が進みます。特に「ちょこちょこ食べ」や「だらだら飲み」が危険なのはこのためです。
つまり、菌 × 糖 × 歯の強さ × 時間 が組み合わさることで虫歯は発生するのです。
2. 虫歯の進み方(ステージ)
虫歯には段階があり、それぞれで症状が違います。
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C0(初期段階)
歯の表面が白く濁ったり、透明感がなくなったりします。まだ穴はなく、痛みもありません。この時期なら歯磨きやフッ素で元に戻る可能性があります。 -
C1(エナメル質の虫歯)
歯の表面に小さな穴ができ始めます。痛みはまだほとんどありません。歯科医院で小さく削って詰め物をすることが多いです。 -
C2(象牙質まで進んだ虫歯)
冷たいものや甘いものがしみるようになります。ここまで来ると自然には治らず、削って詰める必要があります。 -
C3(神経まで進んだ虫歯)
強い痛みを感じることがあります。夜眠れないほど痛む場合もあります。神経を取る「根管治療」が必要になることが多いです。 -
C4(歯がほとんど壊れた状態)
歯の頭の部分がなくなり、根だけが残ります。抜歯になることも少なくありません。
3. 虫歯の症状
虫歯は、進行度によって感じる症状が変わります。
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初期は「痛みなし」なので気づきにくい
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甘いもの・冷たいものがしみる(C2)
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噛むとズキッとする
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何もしなくても痛みが続く(C3)
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進みすぎると痛みが逆に消える(神経が死んでしまうため)
つまり「痛くないから大丈夫」というのは危険です。
4. 虫歯の治療
虫歯ができたら自然には治らないため、歯医者さんでの治療が必要です。
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フッ素や歯磨きで様子を見る(C0)
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小さく削って詰める(C1〜C2)
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神経を取って根の治療をする(C3)
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抜歯して入れ歯・ブリッジ・インプラント(C4)
治療が進むほど費用も時間もかかるため、早めに受診することが一番の節約です。
5. 虫歯の予防法
虫歯は「予防できる病気」です。次のことを意識しましょう。
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正しい歯磨き
毎日ていねいに磨き、フッ素入りの歯磨き粉を使うと効果的です。 -
だらだら食べをしない
甘いものを食べるなら、時間を決めて食べることが大切です。 -
定期的な歯科検診
1〜3か月に一度は歯医者さんでチェックを受けましょう。早期発見・早期治療が可能になります。 -
フッ素やシーラント
特に子どもには歯の溝を埋めるシーラント処置や、フッ素塗布がとても有効です。 -
唾液の働きを大切に
よく噛んで食べることで唾液が出て、口の中が酸性に傾くのを防ぎます。
6. 虫歯が体全体に与える影響
「歯の病気だから口の中だけ」と思う人もいますが、実は全身に影響を与えることがあります。
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虫歯菌が血液に入って心臓や脳に悪影響を及ぼす可能性
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妊娠中に虫歯が多いと早産や低体重児出産のリスクが高まるという報告
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噛めなくなることで栄養不足につながるリスク
つまり「歯の健康は体の健康につながる」のです。
まとめ
虫歯とは、口の中の菌が糖から作る酸によって歯が溶ける病気です。初期段階なら自然に治る可能性もありますが、進むと削ったり抜いたりしなければなりません。
しかし、正しい歯磨き・食生活・定期検診を心がければ、虫歯は防げる病気です。
「痛くなってから歯医者」ではなく、「痛くならないために歯医者」に行くことが、これからのスタンダードになるでしょう。