予防歯科と歯科の新常識
予防歯科とは、虫歯や歯周病などの口腔内の病気を未然に防ぎ、口の中の健康を保つための取り組みを指します。
治療が必要になる前に問題を防ぐことを目的としており、近年では「治療から予防へ」という流れが歯科医療全体のトレンドとなっています。
歯を削る、抜くといった従来の治療中心の歯科医療から、
口腔疾患の発症を防ぐ予防中心の医療へとシフトすることで、患者様の負担を軽減し、長期的な健康維持が可能となります。
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なぜ予防歯科が重要なのか?
1. 虫歯や歯周病の進行を防ぐ
虫歯や歯周病は、初期段階では自覚症状が少なく、気づいたときにはかなり進行していることが多いです。
一度進行すると元に戻すことは困難で、治療には時間や費用がかかる場合があります。予防を行うことで、
そもそも病気になるリスクを大幅に減らすことができます。
2. 全身の健康と関連がある
口腔内の健康は全身の健康とも密接に関係しています。例えば、歯周病は糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、認知症、早産などとの関連が指摘されています。
口腔ケアを徹底することは、これらの病気の予防にもつながります。
3. 高齢になっても自分の歯で食べられる
8020運動(80歳になっても20本以上の歯を保とうという運動)に代表されるように、
高齢になっても自分の歯で食事を楽しめることはQOL(生活の質)に直結します。
しっかり噛んで食べることは、認知機能の維持や転倒リスクの低下などにもつながります。
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歯科予防の3つの柱
1. セルフケア(自己管理)
毎日のブラッシング(歯磨き)が予防の基本です。
正しい歯磨き方法を身につけ、毎日丁寧に行うことで、プラーク(歯垢)や歯石の蓄積を防ぐことができます。
加えて、デンタルフロスや歯間ブラシ、洗口液(マウスウォッシュ)なども活用すると効果的です。
【ポイント】
• 食後はできるだけ早くブラッシング
• 寝る前の歯磨きは特に丁寧に
• フッ素入りの歯磨き粉を使用する
• 歯ブラシは1ヶ月程度で交換
2. プロフェッショナルケア(歯科医院でのケア)
ご自分で口腔内の汚れを完全に除去することは不可能です。
口腔内の汚れや初期の病気の兆候を、歯科医院での定期検診や専門的なクリーニング(PMTC)でチェック・除去してもらうことが重要です。
【代表的な予防処置】
• スケーリング(歯石除去)
• フッ素塗布
• シーラント(奥歯の溝を埋めて虫歯予防)
• 噛み合わせのチェック
定期的な受診により、小さな異変にも早期に気づくことができ、大きなトラブルを未然に防げます。
どれだけリスクの低い方でも3か月に1回はメンテナンスが必要と言われてます。
3. 生活習慣の見直し
食生活や喫煙、ストレス、睡眠なども口腔の健康に大きく関与しています。特に糖分の摂取量と頻度は虫歯の発症に直結するため注意が必要です。
【予防のための生活習慣】
• 間食を控える(特に甘いもの)
• よく噛んで食べることで唾液の分泌を促す
• 規則正しい食事時間
• 禁煙(喫煙は歯周病の最大のリスク因子)
• ストレスをためない(免疫力の低下が歯周病を悪化)
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年齢に応じてお口の中のリスクも違うので、予防のポイントも異なります
幼児・子ども
• 親による仕上げ磨きが重要(小学校中学年までは必要)
• フッ素塗布やシーラントの活用
• 定期的な検診で歯並びや噛み合わせも確認
成人
• 歯周病の初期症状に注意(出血・口臭など)
• 定期的なスケーリング
• 食習慣や喫煙習慣の見直し
高齢者
• 根面う蝕(歯の根元の虫歯)に注意
• 入れ歯の清掃やメンテナンス
• 唾液の分泌が少なくなるため保湿対策も必要
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人生100年時代において「オーラルフレイル(口腔機能の衰え)」の予防も重要視されるようになってきました。
口の健康が全身の健康と直結するという考え方が定着しつつあり、予防歯科は健康寿命を延ばすための基盤のひとつと位置づけられています。
予防歯科は、単に虫歯や歯周病を防ぐだけでなく、全身の健康や人生の質(QOL)を左右する大切な要素です。
日々のセルフケアに加え、定期的な歯科医院でのチェックと専門的なケア、そして生活習慣の見直しを組み合わせることで、
生涯にわたって健康な歯と口を維持することが可能になります。
「歯が痛くなったら歯医者に行く」のではなく、「痛くならないように歯医者に行く」
それがこれからの新しい常識です。